序論
これまでにも、いくつかの製品比較記事を執筆してきました。興味のある方はぜひご覧ください。
- NocoBaseとNocoDB: オープンソースのノーコードツールの徹底比較
- オープンソースCRUD開発ツール:NocoBaseとRefineの比較
- NocoBaseとAppsmith:どのオープンソースのローコードプラットフォームがあなたに適していますか?
- NocoBase vs Salesforce: 理想のCRMを選ぶには?
本記事では、もう一つの優れたローコード開発プラットフォーム OutSystems について詳しく解説します。この比較を通じて、NocoBase と OutSystems の違いをより深く理解することができます。
なぜ NocoBase と OutSystems を比較するのか? それは、両者が異なるローコードプラットフォームの代表的なモデルであるからです。
- NocoBase: オープンソースで、プラグインベースのローコードアプリ開発プラットフォームです。データモデル駆動型(Data Model-Driven)の設計により、高いカスタマイズ性を備え、技術チームが柔軟に業務システムを構築するのに適しています。
- OutSystems: クローズドソースのエンタープライズ向けローコードプラットフォームで、開発から運用までの一連のソリューションを提供します。特に、大企業が迅速にシステムを導入し、公式サポートを受ける場合に適した選択肢です。
両者は異なる特性を持ち、適用できるビジネスシナリオも異なります。本記事では、オープンソース vs クローズドソース という視点から詳細に比較し、企業や開発者が最適なローコードプラットフォームを選択するための参考情報を提供します。
オープンソース vs クローズドソース
オープンソースとクローズドソースのプラットフォームは、拡張性、システム統合、コスト という3つの主要な要素において大きな違いがあります。これらの違いは、企業が長期的にどの開発基盤を選択するかに直接影響を及ぼします。 まず、拡張性に関しては、オープンソースプラットフォームが完全なコードアクセスと自由な制御を提供するのに対し、クローズドソースのプラットフォームはベンダーによる制限を受けるため、カスタマイズの自由度が低くなります。 しかし、企業がシステムを開発する際、拡張性と同じくらい重要なのが、既存の業務システムとどれだけスムーズに統合できるか という点です。
NocoBase の統合性
NocoBase は マイクロカーネル + プラグインアーキテクチャ を採用しており、すべての機能をプラグインとして提供することで、高度な拡張性を実現しています。
- プラグインアーキテクチャ: 必要に応じてプラグインを追加・変更・削除でき、カスタマイズの自由度が極めて高い。
- オープン API: REST API を提供し、企業の内部システム(ERP、CRM、BI ツールなど)とスムーズに統合可能。
- カスタムデータモデル: MySQL、PostgreSQL などのデータベースと直接連携でき、複雑なデータ構造を柔軟に設計可能。
OutSystems の統合性
OutSystems も、エンタープライズ向けの強力な統合機能を提供しています。
- 標準の統合機能: SAP、Salesforce、Microsoft Azure などの主要なエンタープライズソフトウェアとの統合をサポート。
- エンタープライズコネクター: さまざまな API コネクターを公式に提供しており、多くの業務システムとスムーズに連携可能。ただし、一部の高度な機能は追加料金が発生することがある。
- SDK/API の制限: 基本的に OutSystems 公式 SDK に依存しており、一部の API は企業向けプランでのみ利用可能。また、基盤となるロジックを直接変更することはできないため、カスタマイズ性は制限される。
コスト分析については、記事の最後で詳しく試算を行います。
それでは、次にコア機能の比較を行います。
コア機能の比較
開発環境
ローコードプラットフォームの最大の目的は、アプリケーション開発の効率を向上させることです。NocoBase と OutSystems は、それぞれ異なる開発アプローチを採用しています。
NocoBase の開発環境
NocoBase はフロントエンドのブロックベース構成を採用しており、開発者は視覚的にページやデータの連携を構築できます。まるでブロックを組み立てるように、直感的な操作で画面レイアウトやデータの処理フローを設計可能です。
- モジュール化された設計: 各機能がブロック単位で提供され、自由に組み合わせてカスタマイズ可能。
- WYSIWYG(所見即所得)エディタ: プログラミングの知識がなくても、UI の配置やデータの表示設定を直感的に操作できる。
- プラグインアーキテクチャ: ノーコード開発を可能にしながら、開発者がプラグインを作成することで高度なカスタマイズも実現可能。
NocoBase は、ビジュアル開発の直感性とエンジニア向けの拡張性を兼ね備えたプラットフォームであり、技術チームと業務チームの協力を促進します。
OutSystems の開発環境
OutSystems は統合開発環境(IDE)を提供し、開発者はコンポーネントのドラッグ&ドロップやビジュアルエディタを利用して、アプリを迅速に構築できます。
- 組み込みの UI コンポーネント: 豊富なビジュアルコンポーネントや業務ロジックモジュールを提供し、開発の手間を軽減。
- ワークフロー駆動型開発: 業務プロセスをビジュアルエディタ上で構築でき、複雑なロジックもコード不要で設定可能。
- マルチデバイス対応: Web アプリ、モバイルアプリの両方に対応し、PWA やネイティブアプリの開発も可能。
OutSystems は、標準化された開発環境を提供することで、エンタープライズ向けのスピーディなアプリ開発を支援します。ただし、カスタマイズ性は一定の制約があり、柔軟な設計が求められるケースでは、拡張性の限界に直面する可能性があります。
データモデリング
データモデリングは、エンタープライズアプリケーション開発の基盤となる重要な要素です。データの構造設計が柔軟であればあるほど、ビジネスの変化に適応しやすくなります。NocoBase と OutSystems は、それぞれ異なるアプローチでデータモデリングを実現しています。
NocoBase のデータモデリング
NocoBase はデータモデル駆動のアーキテクチャを採用しており、開発者が自由にデータ構造を定義し、カスタマイズできることを最大の特徴としています。視覚的な UI と強力なデータ管理機能を活用し、ビジネス要件に応じた高度なデータモデリングが可能です。
- 多様なデータソースを統合可能: MySQL、PostgreSQL、SQLite などのデータベースと直接連携。
- 柔軟なデータモデリングツール: 直感的な操作が可能なデータテーブル管理インターフェースを活用することで、データモデルを素早く作成・管理できます。さらに、ER 図のようなビジュアルツールも搭載しており、開発者が業務要件からデータの関係性を整理しやすくなっています。
- カスタムデータテーブル: 通常のテーブル だけでなく、階層型データ管理(ツリーテーブル) や カレンダー機能付きテーブル など、ビジネスニーズに合わせた設計が可能。
- 詳細なフィールド設定: フィールドごとにデータ型やルールを細かく設定し、特定の業務要件に応じたデータ管理を実現。
NocoBase のデータモデリングは、企業の業務システムに適応しやすい柔軟性を持つため、特にデータ構造を細かくカスタマイズしたい場合に最適です。
OutSystems のデータモデリング
OutSystems は自動データベース管理を採用しており、開発者がデータベースを手動で設計する必要はありません。ビジュアルツールを使ってデータモデルを作成すると、システムが自動的に最適なデータベース構造を生成します。
- データ管理の負担を軽減: フィールド追加やスキーマ変更はすべて自動処理され、データ整合性を維持。
- データの一貫性を保証: 例えば、OutSystems ではフィールド変更時に影響範囲を自動解析し、適切なテーブル設計を維持する。
- ビジュアルデータモデリングツール: 開発者はドラッグ&ドロップでデータ関係を設定可能。ただし、データベースの細かな調整は OutSystems の制約を受ける。
OutSystems のデータモデリングは、標準化された業務アプリを迅速に開発するのに適しているため、シンプルなデータ構造のアプリを素早く立ち上げたい企業にとっては、大きなメリットとなります。
アクセス権限管理
企業が業務システムを運用する上で、データのセキュリティとコンプライアンスを確保するためには、適切なアクセス管理が不可欠です。NocoBase と OutSystems は、それぞれ異なるアプローチでアクセス制御を実現しています。
NocoBase のアクセス権限管理
NocoBase は、企業向けの詳細なアクセス制御機能を提供しており、柔軟なセキュリティ設定が可能です。
- ロールベースのアクセス制御(RBAC):複数のロールを作成可能(例: 管理者、一般ユーザー、ゲストなど)。各ロールごとに異なる閲覧・編集・削除権限を細かく設定できる。
- フィールドレベルのアクセス管理:特定のユーザーまたはロールに対して、特定のデータフィールドのみ編集可能にするなど、きめ細かな制御が可能。
- API レベルのアクセス制御:認証なしの外部リクエストを制限し、企業システムのセキュリティを強化。例えば、社内の特定部門のユーザーのみが、API 経由で機密データにアクセスできるように制御可能。
- 多様な認証方式に対応:CAS、OIDC、SAML、LDAP など、エンタープライズ向けの認証方式をサポートし、大規模な企業環境にも適応可能。
NocoBase のアクセス管理は、高いセキュリティ要件を持つ企業向けに、柔軟なカスタマイズが可能という点が大きな強みです。
OutSystems のアクセス権限管理
OutSystems も、企業向けに標準化されたアクセス管理機能を提供しています。
- ユーザーロールの管理
- 管理者、開発者、一般ユーザー など、基本的なロールを定義し、それぞれのアクセス権限を設定可能。
- ページ単位のアクセス制御
- アプリ内の特定のページやモジュールへのアクセス権を制限できる。
- 例えば、財務データを扱うページは特定の管理者のみが閲覧可能にするといった制御が可能。
- 多様な認証方式に対応
- シングルサインオン(SSO)、OAuth 2.0、SAML、LDAP、Active Directory(AD) など、多くの企業システムと連携可能。
- 公式フレームワーク依存の拡張性
- OutSystems のアクセス制御は、標準的な業務アプリには適しているが、カスタム要件に対応する場合は、OutSystems Forge の拡張プラグインを利用する必要がある。
- 例えば、「動的にロールを変更する」「特定のデータに対してユーザーごとに異なる権限を設定する」などの高度なアクセス管理は、追加のカスタム開発が求められる。
OutSystems は、エンタープライズ向けの基本的なアクセス管理機能を備えていますが、カスタマイズ性の高いセキュリティ要件に対応する場合は、追加開発が必要になる点に注意が必要です。
ワークフローと自動化
ワークフローと自動化機能は、企業が業務プロセスを合理化し、生産性を向上させるための重要な要素です。NocoBase と OutSystems は、それぞれ異なるアプローチでワークフローの設計と自動化を実現しています。
NocoBase のワークフローと自動化
NocoBase は、プラグインベースのワークフローエンジン** を採用しており、企業が独自のビジネスプロセスを柔軟に設計・運用できるようになっています。特に BPM(Business Process Management)レベルの業務フロー を視覚的に構築できる点が特徴です。
- BPM レベルのワークフロー設計
- ビジュアルワークフローエディタ を活用し、承認プロセス、通知送信、タスクの自動割り当て などを柔軟に設定可能。
- 例えば、経費申請の承認プロセス を自動化し、上長がワンクリックで承認できるように設計できる。
- イベント駆動型アーキテクチャ
- トリガー(条件付きイベント)、スケジュールタスク、ユーザー操作イベント を組み合わせ、柔軟な業務自動化を実現。
- 例えば、「特定の契約が更新された際に、自動で通知メールを送信する」といったシナリオを簡単に設定可能。
- カスタムワークフローの拡張
- API 連携 を活用し、外部システムと統合したワークフローを構築可能。
- 例えば、Salesforce や Slack との連携 により、顧客データの変更をリアルタイムで通知することも可能。
- ノーコードとローコードのハイブリッド
- ノーコードで基本的なワークフローを構築できる一方、開発者はJavaScript やカスタムスクリプト を使用して、より高度な自動化を実装可能。
このように、NocoBase のワークフローシステムは、複雑な業務フローを柔軟にカスタマイズできる点が強みです。
OutSystems のワークフローと自動化 OutSystems も、企業向けのワークフロー機能を標準搭載しており、開発環境全体と統合されたプロセス自動化機能 を提供しています。
- プロセス駆動型開発(Process Modeler)
- ビジュアルエディタ で業務フローを設計し、承認ルールやタスクの進行管理 を定義可能。
- 例えば、社員の入社手続きを OutSystems 内でワークフロー化 し、関連する HR システムと自動連携することが可能。
- エンタープライズシステムとの統合
- OutSystems のエコシステム内の機能(ユーザー管理、通知システムなど)と自動連携 し、業務の一部として統合可能。
- 例えば、「顧客の注文が確定した際に、社内の在庫管理システムに自動でデータを反映させる」などの業務フローが実現可能。
- ステートマシンベースのロジック
- ワークフローの各ステップごとに「状態(ステート)」を管理 し、特定の条件が満たされた際に次のステップに自動遷移。
- 例えば、「顧客の問い合わせが「未対応」から「対応中」に変更された際に、自動でサポート担当者に通知を送る」といったプロセスを実装可能。
- 標準化されたワークフロー機能だが、カスタマイズには制限あり
- OutSystems のワークフロー機能は、標準的な業務プロセスを効率化するには最適だが、より複雑なプロセスを設計するには追加の API 呼び出しやカスタム開発が必要。
- 例えば、「ワークフローの途中で外部 API を呼び出し、処理結果に応じて動作を変える」といった高度なシナリオは、追加のスクリプト開発が必要になる。
OutSystems は、シンプルな業務プロセスの自動化には向いているものの、柔軟性を求める場合には制約がある という点を考慮する必要があります。
コストパフォーマンス比較
ローコードプラットフォームの導入コストは、チームの規模や利用目的によって大きく異なります。以下では、NocoBase と OutSystems の年間コストを比較し、それぞれのプラットフォームがどのような場面に適しているのかを解説します。
開発チームの規模 | NocoBase のコスト | OutSystems のコスト |
---|---|---|
1-10 名(小規模チーム) | 無料(コミュニティ版)または ¥5,000(スタンダード版) | 約**$36,300/年** |
10-50 名(中規模チーム) | ¥50,000(プロフェッショナル版、永久ライセンス) | $80,000+/年(ユーザー数とアプリ規模による) |
50+ 名(大企業向け) | エンタープライズ版(カスタム価格) | $100,000+/年(アプリ数・ユーザー数により変動) |
💡価格の参照:
まとめと提案
これまでの比較を通じて、NocoBase と OutSystems の違いが明確になりました。両者はオープンソース vs クローズドソース、拡張性、データモデリング、アクセス管理、ワークフロー、コストなど、さまざまな面で異なる特徴を持っています。
もしあなたが以下のような要件を持っているなら:
✅ コードを完全に管理し、自由度の高い開発環境を求めている
✅ オンプレミスで運用し、データセキュリティを確保したい
✅ 一括購入でコストを抑え、長期的に運用したい
✅ 開発チームに一定の技術力があり、データ構造やワークフローを柔軟に設計したい
👉 NocoBase が最適!
もしあなたが以下のような要件を持っているなら:
✅ 十分な予算があり、年間のサブスクリプション費用を支払える
✅ サーバー管理をしたくない、公式サポートを受けながら運用したい
✅ 標準的な業務アプリの開発が中心で、大規模なカスタマイズは必要ない
👉 OutSystems が最適!
追加のアドバイス
NocoBase は技術チーム向けの柔軟なプラットフォームですが、コーディングなしでプラグインを活用すれば、ノーコードでも多くの機能を構築できます。現在、多くの企業が NocoBase を活用して業務アプリを開発しています。詳しくは、以下のカスタマー事例をご覧ください。 NocoBase ユーザーストーリー
さらに、ローコード/ノーコードプラットフォームの選択で迷っている場合、以下の記事も参考にしてください:
最終的な選択は、チームの規模、予算、技術力、業務ニーズによって決まります。適切なローコードプラットフォームを選び、ビジネスの成長を加速させましょう!
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